☆西浜さんのプロフィール☆
1944年生。1989年12月受洗。
2005年3月琉球大学大学院修士課程修了。
2009年3月大阪市立大学大学院博士課程単位取得退学。
現在、大阪市大人権問題研究センター会員ならびに共生社会研究会所属。
日本キリスト教団大阪教区沖縄交流・連帯委員会委員長


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第74 号(2009年10月)

◆ 目次 ◆
1. 大阪では9月11日に大江・岩波沖縄戦裁判支援連絡会学習会が、沖縄では9月29日に県民大会決議を実現させる県民集 会が開かれる。
 
2. 9月13日(日)、日本キリスト教団大阪教区沖縄交流・連帯委員会主催で、第35回エイサー祭りを見学し、沖縄料理を味わう。
 
3. 沖縄選出・出身国会議員で「うるの会」が結成される。9月25日(金)には、服部良一さんの祝勝会が開かれる。
 


1. 大阪では9月11日に大江・岩波沖縄戦裁判支援連絡会学習会が、沖縄では9月29日に県民大 会決議を実現させる県民集会が開かれる。

   9月11日(金)、大江・岩波沖縄戦裁判支援連絡会は、エルおおさかで高嶋伸欣・琉球大学名誉教授を講師に「沖縄戦の真実をどう伝 えるか―教科書から『集団自決』の真実を消す動きに抗して―」と題した学習会を開きました。


主催者挨拶をする岩高 澄牧師

 支援連絡会代表世話人である岩高 澄牧師の主催者挨拶に続いて、高嶋伸欣さんより、概略次のような講演を受けました。
 2007年12月26日、「軍の関与」が復活し教科書検定は結着したかのように思われているがそうではない。文科省は未だ「軍の強制」を認めていないと沖縄は 捉えている。
 そうしていると、今度は8月4日に藤岡信勝さんが会長の「新しい歴史教科書をつくる会」主導で編集された自由社版の教科書が、横浜市で使われることが決まった。
この教科書は沖縄戦について「(1945年)4月、アメリカ軍は沖縄本島に上陸し、ついに陸上の戦いも日本の国土に及んだ」と記述している。前の扶桑社版では 「米軍は沖縄本島に上陸し」とあり、米軍は4月1日に読谷村に上陸したから、この表現だとギリギリ間違いとはいえないが、今回「ついに陸上の戦いも日本の国土に 及んだ」と字数にすれば20字ほどを書き加えた。これは二重の意味で事実に反している。第一に、沖縄戦は3月26日に米軍が慶良間諸島に上陸したところから始ま っている。この記述は慶良間諸島における集団自決(強制集団死)を意図的に隠すためにしたものかもしれない。第二に、沖縄戦が始まる前に小笠原諸島硫黄島で地上 戦が起こっている。小笠原諸島は東京都である。2月19日に米海兵隊が硫黄島に上陸し、3月17日に守備隊が全滅しているのだ。


講演する高嶋伸欣さん

 ところで、2007年12月26日に至る経過の中でも、教科書執筆者は大変な努力をしてきた。たとえば東京書籍の教科書Aでは再訂正申請で、<側注>に「沖縄 県では、県議会・全市町村議会で検定意見の撤回を求める意見書が可決され、同年9月には大規模な県民大会が開催された」と、別ページに「2007年の教科書検定 の結果、沖縄戦の『集団自決』に日本軍の強制があった記述が消えたことが問題になった」と書いた。さらに、「集団自決」を<側注>で「これを『強制集団死』とよ ぶことがある」とまで言及した。こうしたことは事実だから文科省は“駄目だ”とは言えなかった。このような努力が教科書執筆者によってなされている。
 大江・岩波沖縄戦裁判の最高裁での判決に注目しつつ、今後も教科書から集団自決(強制集団死)の真実を消す動きに抗していきたい。
 以上のように高嶋伸欣さんは話されました。


9.29県民集会を報じる『沖縄タイムス』

 11万6千人余が集まった2007年9月29日の県民大会(『沖縄通信 第51号』2007年10月を参照してください)からちょうど2年が経った9月29日 (火)に「9・29県民大会決議を実現させる県民集会」が那覇市の県民広場で開かれました。
集会は沖縄県老人クラブ連合会・県婦人連合会・県PTA連合会・青春を語る会・県青年団協議会・県子ども育成連絡協議会の6団体が主催し、1,000人余が集ま りました。
 「沖縄条項実現を」求める集会アピールは、高嶋伸欣さんが話された講演内容と多くのところで符合しています。以下がそのアピールです。
 2007年3月、文部科学省は高校の歴史教科書検定に際し「沖縄戦の実態について誤解するおそれのある表現である」とし、「集団自決(強制集団死)」の記述を 削除させるための検定意見を付したことが明らかになった。
 その検定意見に対し県民は怒りの声を上げた。「沖縄戦の事実をゆがめてはならない」という思いは、復帰後最大規模といわれる11万6千人余の県民大会につなが ったのである。
 このような動きを受けて、文科省は執筆者による訂正申請は認めたものの、県民の願いである「検定意見の撤回」などについてはいまだ実現していない。それどころ か、「検定制度の見直し」では、新たに「執筆者に守秘義務を課す」など、県民が求めた「検定制度の透明化」とは逆行するものとなっている。
 しかも、文科省は今年、沖縄戦について「4月、アメリカ軍は沖縄本島に上陸し、ついに陸上の戦いも日本の国土に及んだ」と記述し、意図的に3月に起こった「集 団自決(強制集団死)」を無かったことにしようとする教科書に「検定合格」を与えている。07年、連続して文科省に対し沖縄県議会をはじめとして多くの要請団が 「検定意見の撤回、沖縄条項などの確立」を求めてきた。その要請の中心は3月に起こった「慶良間諸島の『集団自決(強制集団死)』」の記述をめぐる内容であり、 このような教科書を合格させた文科省の責任は重いといわざるを得ない。
 07年9月29日の「県民大会」を機に、多くの戦争体験者が重い口を開き、沖縄戦の真実を語り始めている。その声に真摯に耳を傾けることこそが、今必要なので ある。
これまで政府・文部科学省が「審議会が決めたことには口出しできない」と「審議会」を隠れ蓑とし、県民の声に耳をふさいできたことを、これ以上放置することは許 されない。
 私たちは、連立政権が実現した今、「9・29県民大会決議を実現」させるために、再び県民の声を届けなければならない。そして、速やかに密室でなされた「検定 意見を撤回」させ、二度と「沖縄戦の実相を歪める」ことが起こらないよう「沖縄条項」の実現を求めるものである。
 以上が、集会アピールです。
この集会を報じた『沖縄タイムス』9月30日付の「社説」は、
「教科書検定意見の撤回を訴える『9・29県民大会決議を実現させる県民集会』が…開催された。政権交代により政府が方針を変える下地ができた、という期待感が ある。新政権は次世代に真実を伝えたい、との声を真摯に受け止めるべきだ。
 これほど県民運動を背景に国政と対峙してきた地域がほかにあるだろうか。(中略)新政権の川端達夫文科相は…『集団自決』になぜ文科省は口を挟んだのか、その 経緯を明らかにすべきだ」と述べています。
 また『沖縄タイムス』同日の「文芸時評」欄で平敷武蕉さんは、
「検定意見を撤回し、大江・岩波沖縄戦訴訟にとどめをさすことができるかという問題は、新政権の性格をはかるうえで一つのメルクマールとなる。
 何しろ、この問題については、沖縄県議会はじめ全市町村議会が与野党全会一致で決議していることであり、基地問題のように交渉相手があるわけでもない。新政権 にとって、躊躇する理由はないはずだからである」と書いています。

 大江・岩波沖縄戦裁判支援連絡会は、次回の学習講演会を11月27日(金)午後6時30分よりエルおおさかにおいて、元沖縄県知事の大田昌秀さんを講師に招き、 開催します。次回は大きな会場を取っています。多くのみなさまのご参集を心から呼びかけます。


2. 9月13日(日)、日本キリスト教団大阪教区沖縄交流・連帯委員会主催で、第35回エイサー 祭りを見学し、沖縄料理を味わう。

 9月13日(日)、大正区の千島公園グランドで第35回エイサー祭りが開かれました。前日の雨もあがり快晴の日となりました。エイサー祭りについては『沖縄通 信 第18号』(2004年10月)の「大阪で、与那原大綱曳きを見る」、『同 第39号』(2006年10月)の「9月17日に第32回エイサー祭りが盛大に 開かれる」も参考にしてください。


クイチャー

 この『通信』のプロフィールにもあるように、今期ぼくは日本キリスト教団大阪教区沖縄交流・連帯委員会の委員長を務めていますが、この日、同委員会の主催で 「エイサー祭りを見学し、沖縄料理を味わおう」を企画しました。
快晴の下、2歳から85歳までの33名が各教会・伝道所での主日礼拝出席後、午後4時に会場に集まりました。


三線ライブ

第35回エイサー祭りリーフレットの裏表紙に「先達の供養歌−ニンブチャー」と題する詩が掲載されています。

七月たなばた 酒たぼり      七月が来た たなばたが来たぞ
御万ぬニンブチャーよ       酒も供物も用意してください
米(ゆに)たぼり         供養しましょう 御願いたしましょう

十三になたぐとぅ 親はなり    十三歳になって 一人前に扱われて
やまとぅんかい職(しくち)    早くに親から引き離されて
ちゃーびたむ           日本に仕事を求めてやって来ました

二十歳になたぐとぅ 親思てぃ   仕事もがんばって 年ごろになり
職(しくち)いっぺー       親のことを思うと 早くお金をためて
うみはまたん           島へ帰りたいと 心はさわぐ

やしが我んね           だけど月日は流れて 年も寄ってくる
島とぅめらむ           もう島には帰れそうもない
二才達エイサー          そんな年になってしまった 若い衆よ
頼まびいら            あんた達のエイサーが唯一の楽しみだ
                  頼んだゾ

 じーんと心に響いてくる唄です。


「ところで沖縄広場」前で記念写真

2時間エイサー祭りを見学して、午後6時より近くの沖縄料理店に移動し、参加者一同で沖縄料理を味わいました。


2. 沖縄選出・出身国会議員で「うるの会」が結成される。9月25日(金)には、服部良一さんの 祝勝会が開かれる。

 去る8月の総選挙の結果、沖縄の4つの小選挙区で自公は全敗し、比例復活もなりませんでした。比例単独の公明党の候補も落選し、衆議院での自公の議席はゼロと なりました。
一方、民主、社民、国民新3党所属の沖縄選出・出身国会議員6氏と無所属の糸数慶子参院議員は9月7日(月)、那覇市内で会合を開き、「うるの会」を再発足させ ることで一致し、米軍普天間飛行場の辺野古移設反対や2010年度沖縄関連予算の見直しなどを新政権に共同で求めていくことを決めました。政策決定に沖縄の意向 を反映させるのが狙いで、会長に喜納昌吉参院議員(民主)が就任しました。「うる」とはサンゴのことで、うるま市とかうるま伝道所の「うるま」とは、美しいサン ゴという意味です。
 会議で7氏は、
(1)日米地位協定の抜本的改定を米政府に提示、両政府で交渉する。米軍再編計画の見直しと「普天間」の辺野古移設反対を連立協議の合意事項とするよう求める。
(2)「普天間」の辺野古移設反対
(3)防衛省の2009年度予算に盛り込まれている「普天間」辺野古移設関連予算の執行停止を求め、新防衛大臣と協議する―の3点について文書に署名しました。
 喜納会長は「結束して基地や財政などの問題解決に取り組んでいきたい」と強調し、会長代行の照屋寛徳衆院議員(社民)は「連立協議がまとまる前に、合意事項を (所属する)各政党を通して反映させたい」と語りました。
 会議では、具体的に
(1)2010年度内閣府概算要求の予算規模を2,800億円から3,500億円に引き上げる。
(2)鉄軌道導入に向けた調査費計上
(3)沖縄総合事務局や防衛省などが発注する工事の地元優先発注
(3)沖縄担当大臣や経済界、労働界、市町村長との定期会合やタウンミーティングの開催―も確認しました。
 副会長に山内徳信参院議員(社民)と糸数氏、幹事長に下地幹郎氏(国民新)、事務局長に玉城デニー氏(民主)、同次長に瑞慶覧長敏氏(同)が就任しました。
 「日米地位協定の抜本的改定を米政府に提示、両政府で交渉する。米軍再編計画の見直しと『普天間』の辺野古移設反対を連立協議の合意事項とするよう求める」に ついては、9月9日(水)の『3党連立政権合意書』の中で
 「沖縄県民の負担軽減の観点から、日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」とまとまりました。
 その後、「うるの会」と防衛大臣、「うるの会」と沖縄担当相との定期協議を持つことも決まりました。政権交代を受けて、沖縄の状況打開を図る絶好の機会です。
全力をあげて運動を盛り上げていきましょう。


決意を述べる服部良一さん

 一方、近畿比例で当選した服部良一さんの祝勝会が9月25日(金)に大阪で開かれ、約170人が集まりました。これには岩高 澄牧師も出席されました。


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