☆西浜さんのプロフィール☆
1944年生。1989年12月受洗。
2005年3月琉球大学大学院修士課程修了。
2009年3月大阪市立大学大学院博士課程単位取得退学。
現在、大阪市大人権問題研究センター会員ならびに共生社会研究会所属。
日本キリスト教団大阪教区沖縄交流・連帯委員会委員長


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第82 号(2010年6月)

◆ 目次 ◆
1.沖縄を踏みつけ、差別して日本の政治を執り行うことはもはや出来ない。
 
2.5月28日(金)、民意を踏みにじった首相が、民意を大切にする閣僚を罷免する。
 
3.5月28日(金)、日米共同声明に反対する集会が、那覇市と名護市で開かれる。
 
4.5月27日(木)、全国知事会議は、“基地の受け入れしない”の大合唱
 
5.去る鳩 基地残す 迷走劇 嘆く県民(『沖縄タイムス』6月3日付の見出し)
 


1.沖縄を踏みつけ、差別して日本の政治を執り行うことはもはや出来ない。

 6月を迎えようとする頃から鳩山辞任に至る経過は日々局面が変わり、それは劇的なものでした。この『沖縄通信』は月刊なので毎日更 新されるブログのような即応性はありません。ですから事態の表面的な変化だけではなく、その底流に流れる基軸のようなものに注目して、 それを浮き彫りにしていかなければならないと思います。
 ぼくは6月末に発行される『けーし風』67号に、「6月2日、鳩山首相が辞任した。沖縄を踏みつけ、差別して日本の政治を執り行う ことはもはや出来ないということを示した沖縄民衆の怒りの結果だ」と書きましたが、この思いは増すばかりです。
 4月25日(日)県民大会以降の経過を、仮に民権と国権の相克として概観すると、



5月18日(火)、2,220日目の辺野古を訪れる。

 

 民 権 

 

 国 権 

4月25日

9万3,700人の県民大会

 

 

 

 

5月04日

鳩山訪沖。県内移設表明


5月4日(火)、鳩山訪沖を「怒」で迎える。

5月16日

1万7千人が普天間基地包囲

普天間を包囲 トップ記事で報じる5月17日付『沖縄タイムス』

 

 

 

 

5月23日

鳩山再訪沖。辺野古回帰

首相、辺野古移設明言 トップ記事で報じる5月24日付『沖縄タイムス』

 

 

5月27日

全国知事会議(ハ)

5月28日

福島署名拒否⇒罷免(イ)

5月28日 

日米共同声明 

5月28日 

那覇と名護で抗議集会(ロ)

 

 

5月30日

社民党連立離脱

 

 

6月02日

鳩山辞任(ニ)


2.5月28日(金)、民意を踏みにじった首相が、民意を大切にする閣僚 を罷免する。

 (イ)の5月28日(金)、福島社民党党首の罷免について、琉球新報は社説で次のように述べました。
 「これは異なことを聞く。沖縄の民意を踏みにじった首相が、民意を大切にするよう進言してきた閣僚の1人を罷免した。どういう 了見だろうか。県民はとても納得できない。
 非は沖縄を切り捨てた側にあるのであって、首相こそ責任を問われてしかるべきだ。
 首相は、福島氏を罷免した後の会見で『国民の安全と生活にかかわる』と強調した。沖縄の人々を切り捨てておきながら、安全や生 活を説く神経が知れない。政権トップの感覚、政治家としての資質さえ疑う。
 そもそも、沖縄の積年の痛みを『負担の軽減』などという常套句で片付けてほしくない。県民の切なる願いは『耐え難い苦痛の解消』 であり、痛みを『再発させない抜本策』なのである。
 民意無視の合意はいずれ破綻しよう。日米両政府は国外移設を軸に、実現性のある移設策を探るほうが賢明と知るべきだ」(5月2 9日付)と。


辺野古回帰なぜ 「裏切り許さぬ」

 沖縄タイムスもまた、社説で次のように述べました。
 「沖縄を再び切り捨てるこの国のあり方には寒気がするほどの不安を感じる」「名護市で反対の市長を誕生させた地元の民意を(日米 )両政府は踏みにじった。民主的な手続きを無視し続けた」「鳩山首相は記者会見で沖縄への思いを語りながら、本土移転を模索したと 強調した。しかし陸空一体で運用する部隊特性に気づき、本土移転は断念したという。すべて移せばいいことだが、それに触れなかった のはごまかしだ」「これほどの混乱を招き、沖縄をもてあそんだ鳩山首相の政治責任は極めて重く、即刻退陣すべきだ」「普天間飛行場 を使っている海兵隊が沖縄に駐留する理由を歴代政権は説明してこなかった。政治主導を表看板としたはずの民主党政権が実態のない『 抑止力』という軍事用語ですべてを押し切ろうとするのは、文民統制を自ら放棄したことになる。/政府だけでなく、実態のない言葉で 思考停止に陥ってしまう日本の歪(ゆが)んだ言論空間に危うさを感じる。/首相は『辺野古』を明記した共同声明に反対する社民党党 首の福島瑞穂消費者・少子化担当相を罷免した。信念を貫いた福島氏が切られた。閣内調整より米国との関係を優先した手法は間違って いる。/罷免すべきは臆面(おくめん)もなく嘘(うそ)をついた鳩山首相のはずだ」(同日付)と。



「首相の退陣を求める」との社説

 特筆すべきは、沖縄タイムスは5月29日の段階で鳩山首相は「即刻退陣すべきだ」と述べていることです。この時点ではヤマトゥの 新聞は、まだ退陣要求はしていませんでした。
 大田昌秀・元県知事は「(鳩山総理は)恐らく沖縄史上最悪の総理として未来永劫にわたって記録されるに違いない。…本土の軍事評 論家や政治学者は安全な場所にいて、…日米安保条約や軍事同盟が、それを一身に負担させられている人々に具体的にいかなる影響を与 えているかについて、一顧だにしない。国益をうんぬんする『お偉方』は、まず自分の所に基地を引き受けてから口を開くべきだ。…多 数決原理の民主主義の名において、沖縄はいつまでも差別される構造になっている」(『沖縄タイムス』5月29日付)と喝破します。
 そして、5月29日付朝日新聞夕刊の「素粒子」(新聞題名の下にある、小さな囲み記事)は、
 「しつもん!普天間問題、小学生に聞かれたらどう答える?
 ■基地のせいで苦しんでいる沖縄の人たちのために、基地をなくすって聞いたけど、どうしてまた沖縄に基地ができるの?
 ■日本で一番えらい人がみんなに約束したことなのに、守らなくていいの?アメリカのえらい人の方がもっとえらいの?
 ■沖縄の人たちが困っているのに、どうしてほかの場所に住む人たちは助けてあげないの?
 どうして、やさしくないの?」と書いています。


日米、「辺野古」合意 トップ記事で報じる5月29日付『沖縄タイムス』

 さらに、沖縄タイムス5月30日付社説は「解消されない不公平」と題して、次のように主張します。
 「まず海兵隊の体制、任務、活動について『学べば学ぶほど』沖縄でなくてもいいことに気付く。いま現在、沖縄から1,600人 の海兵隊員がイラク、アフガンなど対テロ戦争に派遣されている。/残る部隊はタイ、フィリピン、韓国、オーストラリアなど同盟国 と共同訓練するために遠征している。…/今年は2月にタイでの共同訓練があり、グアムで訓練した4月にかけて、普天間に残ってい たヘリコプターはたったの2機しかいなかった。/この状況を知れば、『抑止』とか『地理的優位性』という言葉がまやかしであるこ とが分かるはずだ。…/沖縄問題の『パンドラの箱』は開けられた。抑止力とか北朝鮮の脅威といった重しではもう閉じられない」と。


3.5月28日(金)、日米共同声明に反対する集会が、那覇市と名護市で 開かれる。

 (ロ)の5月28日(金)、那覇市で開かれた日米共同声明に反対する県民集会で、採択された集会宣言は次の通りです。
 「(前略)炎となって噴き上がる県民の抗議の声を無視し、政府は、本日5月28日に日米会談を開催、『辺野古移設』を確認する という。首相の形だけの沖縄訪問で事を済ませ、返す刀で沖縄を売り渡す構図は、県民の『基地からの脱却』の悲願を踏みにじり、米 軍基地の固定化を図った1972年5月15日の沖縄返還の『屈辱』を再現するものである。
 私たちは、鳩山内閣の県民裏切りによって、政府が再び沖縄を売り渡すことを決して許さない。そして同時に、日本政府に執拗な圧 力をかけ続け、鳩山内閣の県民に対する公約を骨抜きにした米国政府の内政干渉、すなわち、今なお、わが国を占領地扱いし主体的な 外交政策を許さず、米国の論理を押し付け、それによって沖縄を米軍の『軍事要塞』の島として縛り続ける対日政策を激しく糾弾する。
 私たちは日米両政府による沖縄支配を満身の怒りをこめて糾弾する。同時に、沖縄の将来を決定する重要な事項について、県民の意 向を全く無視し、県民の頭越しに決定される日米合意も無効であることを宣言する。そして以下の3点を両政府に要求し、県民がその 実現まで闘いぬく決意でいることを宣言する。
 1.日米両政府は日米合意を破棄せよ!
 2.日米両政府は普天間基地の県内移設を断念せよ!
 3.日米両政府は普天間基地を即時に閉鎖返還せよ!」


民意無視「屈辱」「横暴」雨中に拳

 (ロ)と同じ日、名護市で開かれた「辺野古合意」を認めない緊急市民集会のアピールは次の通りです。
 「本日、発表された新たな日米合意は、民意を無視した合意であり、県外移設を求める名護市民及び県民の意思に沿うものではない。
 名護市や沖縄県の同意なく、強行に日米の合意がなされた事実は、歴史的に見ても地方自治の侵害であり、民主主義の冒涜である。
 国土のわずか0.6%の沖縄に在日米軍専用施設の74%の負担を65年間も強いたうえ、さらに新たな基地を押し付けようとする 『辺野古合意』は『沖縄差別』そのものである。
 日米安保条約に沖縄に基地を置くという条文はない。
 沖縄の米軍基地が、わが国の安全保障のうえで、あるいはアジア及び世界の平和の維持のために不可欠であるというのであれば、基 地の負担は日本国民が等しく引き受けるべきでものである。
 したがって、私たち名護市民は真の地域自治、国民主権、民主主義を取り戻すため、この『辺野古合意』を断じて認めることはでき ない。
 私たち名護市民は、名護市に新たな基地はいらない。
 私たち名護市民は、名護市辺野古への移設に断固反対する。
 私たち名護市民は、『辺野古合意』の撤回を強く求める。」


5月18日(火)、辺野古テント村での嘉陽おじぃら

 那覇市の集会では「日米両政府による沖縄支配」という文言があり、名護市の集会では「『辺野古合意』は『沖縄差別』そのもので ある」「日米安保条約に沖縄に基地を置くという条文はない。沖縄の米軍基地が、…平和の維持のために不可欠であるというのであれば、 基地の負担は日本国民が等しく引き受けるべき」だと述べています。
 『無意識の植民地主義』の著者である野村浩也・広島修道大学教授は、5月15日(土)に開かれた「琉球弧の自己決定権 脱植民地 をめぐって」において「去年から普通に『県外移設』が言われ、反応が変わった。『県外移設』は自己決定権とかかわる言葉であり、沖 縄人がその権利を行使し始めたことを示すもの」「差別ということを沖縄人がきちんと認識するようになったことが、今年からの大きな 変化」と述べ、むぬかちゃー=ライターの知念ウシさんは「『県外移設』ということをヤマトンチューにきちんと言い、あなたたちの基 地を自分たちのところに持って帰りなさいという権利を行使する」と応えています(知念ウシさんは後述する「カマドゥー小たちの集い」 のメンバーです)。さらに野村教授は「『抑止力』という言葉が大好きな日本人は、基地負担を沖縄人に押しつけ『死んでくれ』と言っ ているようなもの。普天間問題が大きな焦点になっているにもかかわらず『基地受け入れ運動』をしない日本人。この状態が異常であり 差別だと思う」(5月30日付『沖縄タイムス』)とまとめています。
 後藤啓文・朝日新聞那覇総局長も「この13年、沖縄をみてきたなかで、今ほど『差別』という言葉を突きつけられることはない」 (5月29日付)と書いています。


4.5月27日(木)、全国知事会議は、“基地の受け入れしない”の大合唱

 (ハ)の5月27日(木)に開かれた全国知事会議では、「『基地受け入れ運動』をしない日本人」が、はしなくも暴露されました。
 森田健作・千葉県知事は「なぜ今、全国の知事を召集したのか。普天間問題は爆発して、大変な状態だ。今回知事を集めること自体が 、全国に火の粉を分散する」と発言しました。また、広瀬勝貞・大分県知事は「全国に負担をお願いしようというとき、米軍兵士による 不祥事について何の手当てもせず、全国に米軍の訓練をばらまくのか」と。米兵による事件・事故は沖縄でなら起こっても構わない、と 言い放っているのです!
 他の政策について、ぼくは支持している訳ではありませんが、沖縄の負担を引き受けようと発言する橋下 徹・大阪府知事には注目して います。しかし、その彼とて「2006年の米軍再編のロードマップを履行し、政府が第2段階の基地負担軽減というときに話を振っても らえれば、できる限りのことはする」「沖縄県に本当に申し訳ないと思っているが、沖縄県にお願いせざるをえない。それが知事会とし て世間に一番ださなきゃいけない意思表示だ」と語ります。辺野古回帰の日米共同声明を呑め!と言っているのです。
 石原慎太郎・東京都知事にいたっては、5月14日(金)の記者会見で「アメリカとの合議の上でしか選択が許されない」「歴史の経 過を眺めれば、沖縄の人は本当に気の毒だけど、もう一回我慢してください」と発言しています。これが『「NO」と言える日本』の著 者なのでしょうか。沖縄はもう十分すぎるほど負担してきたのです。


この手と手で普天間なくす

 一方、豪雨の中、1万7千人が普天間基地を包囲した5月16日(日)に「カマドゥー小たちの集い」は、『声・こえ・KoE』16 号を配布しました。ぼくは『沖縄通信』第2号(2003年5月)で「カマドゥー小たちの集い」を取り上げています(「カマドゥー小」 とは、むかし、沖縄では多くの女性たちにつけられた名前です。カマドゥーとは「愛しい」「かわいい」という意味です)。そこでは、 選挙が大嫌いな彼女たちが、宜野湾市長選では、只一点“基地に反対する候補者を勝たそう”“基地容認の候補者を落そう”と勝手連的 に活動したことを報告しています。
 「基地は県外へ=押しつけられた基地を日本本土へ返そう」と題して、『声・こえ・KoE』16号は、次のように書いています。
 T.「自分が嫌なものを人に押しつけることはできない」に対して
 その通りです。でもそれをしているのが日本本土に人たちです。まず、第一に人口が日本全体の1%にすぎない沖縄が、99%の日本 本土に押しつけることができるでしょうか?できません。逆は可能です。99%が自分の嫌なものを1%に押しつけている。それが過去 から現在までの日本と沖縄の形です。私たちはそのことに気づき、「基地は県外へ」と主張しているのです。そうしなければ、沖縄の次 の世代に、沖縄人が基地を押しつけることになります。
 U.「移設ではなく撤去を」に対して
 「基地は県外へ」は、「基地撤去」をめざして闘ってきた歴史の上に、悩みながらもやっとつかんだ言葉です。そのことを、ぜひ知っ てほしいのです。沖縄人は「イクサやならんどー」という言葉を大切にして、米軍統治下の27年間、復帰後の38年間も「基地撤去」 を言い続けてきました。憲法に望みを託した日本復帰では、基地が撤去されるどころか本土からも移設され自衛隊までやってきました。 憲法を求めたのに安保を押しつけられたのです。それでも現在まで決議、集会、デモ、討論会、座り込み、ビラ、要請等ありとあらゆる 行動を、老若男女、赤ちゃんからお年寄りまで参加しておこなってきました。このことは何度言っても言い過ぎではありません。しかし 残念ながら、「基地撤去」では基地は動きませんでした。
 「基地は県外へ」が具体的になって初めて、日本本土の人たちは、沖縄の声を黙殺することができなくなったのです。それでも未だに 「米国vs鳩山総理vs沖縄県民」という勝手な構図を作り、自分たちは陰に隠れて無関係を装っています。隠れることによって、「基 地はそのまま沖縄に置いていた方がいい、少しは徳之島に負担させて」と発信しているのです。それなのに、日本本土の人に「基地は県 外へ」と要求するのを遠慮しないといけないのでしょうか。基地を動かすためには、99%が1%に押しつけているその事実を踏まえ、 基地は県外へ=押しつけてきた基地を引き取りなさい、なのです。
 V.「安保や抑止力、海兵隊議論を」に対して
 もちろん議論は必要です。しかし、安保に賛成でも反対でも、どちらでもない、わからない、であっても安保条約の体制下にあるのだ から負担を等分にするのは当たり前のことです。まずは基地を一日でも早く日本本土に引き取ってもらうのが先です。それから議論を始 めてもらいましょう。それが道理というものです。
 ◎日本本土のみなさんへ
 「基地を県外へ」というのは、エゴですか?「基地を県外へ」というのは、わがままですか?日本本土のあなたのエゴやわがままで、 65年間も基地を押しつけられているのです。あなたの地元で、沖縄に押しつけてきた基地を引き取る運動をしてください。まずは基地 を引き取ることです。グアムやテニアンへの移設も論外です。安保は日本とアメリカとの条約です。「国外」ではなく、あなたの責任を 担いなさい。


5.去る鳩 基地残す 迷走劇 嘆く県民(『沖縄タイムス』6月3日付の見 出し)

 (ニ)の6月2日(水)、鳩山辞任を受けて、4月25日の県民大会の共同代表を務めた翁長雄志・那覇市長は次のように述べていま す。彼は自民党沖縄県連の幹事長を歴任したこともある保守政治家です。
 「首相が辞めても、(移設先に辺野古を明記した)日米共同声明が残されている。今後も沖縄から県内移設反対の声を上げ続けなけれ ばならない。沖縄は、新たな基地負担は必要ないという一点で、心を一つにすることが大切だ。いったん基地問題が解決したと思ったら 、国民は二度と沖縄に目を向けなくなるのだから」(『沖縄タイムス』6月3日付)と。彼がここで言っている“国民”とは、ヤマトン チュのことです。


去る鳩 基地残す 迷走劇 嘆く県民

 ぼくは、今夏発行される琉球大学同窓会関西支部の機関誌に「基地をヤマトゥで引き受けよう」と題した、次のような文章を投稿しま した。
 辺野古に再び新基地建設が舞い戻ろうとする時に、ぼくはこの原稿を書いています。「米軍普天間飛行場の早期閉鎖・返還と、県内移 設に反対し国外・県外移設を求める」(4月25日に開かれた県民大会の名称)という沖縄の民意ははっきりと示されているのに、「最 低でも県外」との公約をいとも簡単に反故にし、再び三度沖縄が蹂躙されています。この辛さは何に例えればよいのだろうか。
 定年退職前に職場を辞して、ヤマトンチュのぼくが、連れ合いを関西に残し、2003年、単身で琉球大学大学院に進んだのは、ヤマ トゥに翻弄され続けてきた沖縄を政治思想的に深く研究したいと思ったからでした。修士課程の2年間、指導教官・比屋根照夫氏(現・ 名誉教授)のもとで、琉球史や沖縄戦、島ぐるみ闘争、そして復帰運動と反復帰論など多くのことを学びました。その結果、沖縄は内国 植民地の状態であることを確信しました。
 今また普天間基地の移設問題です。実は辺野古に造られようとする基地は普天間の代替などではなく新基地建設であるのに、そのこと は触れられません。危険なのは何も普天間だけではなく、沖縄にあるすべての基地が危険なのに、そのようには述べられません。海兵隊 は突撃部隊であって抑止部隊ではないのに、抑止力という呪縛にかかります。地政学的な有利さなど、今の科学技術の進歩からすれば何 ほどでもないのに、未だにまことしやかに喧伝されます。
 こうしたすべての企みは、沖縄に基地を押し付けておこうとするヤマトゥの理屈でしかありません。0.6%の国土面積に米軍専用施 設の75%が沖縄に集中していることはよく言われますが、逆に考えれば、99.4%の面積に米軍基地を置く場所がないとでもいうの でしょうか。不思議でなりません。
 それ故、関西に住むぼくたち琉球大学の同窓生は、沖縄にある基地をヤマトゥで引き受ける覚悟を持たねばと思うのです。

 

 

 

 

 

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