☆西浜さんのプロフィール☆
1944年生。1989年12月受洗。
2005年3月琉球大学大学院修士課程修了。
2009年3月大阪市立大学大学院博士課程単位取得退学。
現在、大阪市大大学院共生社会研究会所属。日本平和学会、日本解放社会学会各会員。
日本キリスト教団大阪教区沖縄交流・連帯委員会委員長


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第102 号(2014年2月)

1.JR大阪駅前で言論の自由な表現活動が危機に瀕している。

 ぼくも参加している「辺野古に基地を絶対つくらせない大阪行動」(以下、「大阪行動」と略)に対し、現在、重大な 妨害行動がおこなわれています。そのため言論の自由な表現活動が危機に瀕しています。
 この『沖縄通信』でも何度も取り上げてきた「大阪行動」は、沖縄・名護市の辺野古に米軍の新基地建設を許さないと の強い思いから、2004年8月より毎週土曜日にJR大阪駅前でチラシ配布、署名・カンパ活動に取り組んできた市民 グループです。真夏の猛暑の日も冬の寒さの時も、雨の日も強風の時も1週も休まず、積み重ねてきた回数は2014年 2月15日で496回を数えます。そして寄せられた署名の総数は53,941筆にのぼり、そこにこめられた一筆一筆 の思いを11次にわたって近畿中部防衛局に提出し、交渉を重ねてきました。また、集まったカンパは全額辺野古へ送っ てきました。


2013年9月14日 こんなに整然と行動はなされていた

 2004年8月から9年余にわたるJR大阪駅前での行動は終始一貫して整然とおこなわれ、この間何のトラブルも、 何らの事故・事件も発生することなく推移してきました。
 ところが、2013年12月21日の第489回目の行動から事態は一変しました。「在特会(在日特権を許さない市 民の会)」とおぼしきグループが、私たちの行動を妨害するためにこの日突然JR大阪駅前に現れました。5〜6名でや って来た彼らは“沖縄を中国自治区にしようと企んでいる”などと罵声を発し、数限りない差別言辞を弄していましたが、 私たちはそうした挑発を無視し、通常のチラシ配布等の活動をおこないました。
 翌週12月28日。2013年最後の行動の日です。前日の27日に、仲井眞知事は公約を破り、沖縄の民意に従うこ となく辺野古新基地建設を容認しました。仲井眞知事の歴史上許すことのできない裏切り行為にわが意を得たのか、「在 特会」とおぼしきグループは10名を超える人数で再度妨害活動に現れました。彼らの介入をここぞとばかりに利用した JR大阪駅は、私たちの行動を阻止するために駅長を筆頭に数十名を動員しました。この9年余、JR側と私たちの間に も何の問題も発生してこなかったのです。そのことからしてJR大阪駅の対応は異常としか言いようがないものでした。 その結果、この週以降、連続してチラシを1枚も配布できない事態が続いていました。


JR大阪駅の妨害ボード

 妨害活動の中で彼らは次のような差別言辞を発し続けています。
「こいつら朝鮮人ですヨ。外国人は政治活動をしてはいけない。朝鮮人の政治活動は違法だ。やめよ!」
「無許可でのビラ撒きは違法行為だ、JRはやめさせよ!警察は違法行為を取り締まれ!」「このビラを受け取るのは犯 罪行為と一緒です。受け取らないでください!そこの人、取らないで!」
「沖縄の人の振りするのを止めヨ!」「朝鮮人!日本人の振りして活動するな」
 そして引き上げる時に「帰れ」「早く帰れ」「朝鮮人帰れ!」とわめき散らしていました。


1月4日 警察が介入する

 そもそも「道路上のビラ配布は道交法77条1項4号、大阪府道路交通規則15条9号の規制対象とならない」と、1 980年11月26日に大阪地裁で確定した判決が明示していることからしても、私たちはこのような事態を絶対に許す わけにはいきません。それのみならず、2014年1月4日と11日には所轄の曽根崎警察署は機動隊を導入し、私たち を実力で規制したのです。許すべからざることです。


1月11日 機動隊が介入をうかがう


1月11日 再び警察が介入する

 こうした事態に対して「大阪行動」は1月18日(土)、「JR大阪駅前で起きている異常な事態に関する声明」を出 しました。

2.1月31日(金)に憲法研究者らが、「JR大阪駅前における表現活動に対する妨害行為の中止を求める声明」を発表

 上に述べたような妨害行為が、憲法が保障する表現の自由を侵害するものであるとして、1月31日(金)、憲法研 究者らは「JR大阪駅前広場・歩道における表現活動に対する妨害行為の中止を求める憲法研究者声明」を独自に発表 しました。以下はその全文です。


1月11日 やっとゼッケン着用に成功した筆者

 2013年末以来、JR大阪駅前の広場および歩道における市民の平穏な表現活動に対し、JR西日本職員および大 阪府警警察官らから不当な妨害行為が加えられています。私たちは、憲法の研究者として、本妨害行為が憲法21条1 項が保障する表現の自由を著しく不当に侵害するものであることに鑑み、JR西日本と大阪府警に対し強く抗議すると ともに、このような行為を直ちに中止するよう、強く要請します。
 本件においてそのチラシ配布・署名集め・カンパの呼びかけ等の表現活動を妨害されているのは「辺野古に基地を絶 対つくらせない大阪行動(以下、「大阪行動」と表記する)」という市民団体です。9年ほど前から毎週土曜日の午後 に、JR大阪駅南口の駅前の広場および歩道において、なんらトラブルを起こすことなく、490回以上、平穏に宣伝 活動を行ってきましたが、2013年末以来、突如としてその活動を妨害されるようになりました。
 妨害は、ビラ配布にとどまらず、ゼッケンの着用や旗によるメッセージの伝達に及んでおり、他者に意見を伝えると いう表現活動そのものが事実上禁じられていると判断せざるをえません。このような妨害は、憲法によって厳しく禁じ られている、表現に対する「事前抑制」(表現がなされる前に規制すること)にあたる強い疑いがあります。
 妨害行為の理由として、JR西日本は、主に、@「大阪行動」と「在日特権を許さない市民の会(以下、「在特会」 と表記する)」との間に不測の事態が起こる恐れがあること、A「大阪行動」が宣伝活動を行ってきた場所はJR西日 本の「管理地」であることの2点を挙げています。


2月1日 装甲車も配備

 しかし、@に関しては、在特会が暴力を含む物理的介入をしてくる可能性があることを理由に、「大阪行動」の平穏 な宣伝活動を規制することはできません。なぜなら、「敵対的聴衆」の存在を理由として表現の自由を規制することは、 憲法上許されないからです。そのことは、最高裁も(「公の施設」の使用許可に関してではあるものの)「主催者が集 会を平穏に行おうとしているのに、その集会の目的や主催者の思想、信条に反対する他のグループ等がこれを実力で阻 止し、妨害しようとして紛争を起こすおそれがあることを理由に公の施設の利用を拒むことは、憲法21条の趣旨に反 するところである」(最判平成7年−ママ−3月7日、民集49巻3号687頁/泉佐野市民会館事件)と確言してい ます。少なくとも、「大阪行動」の過去9年間の活動実績に照らしても実質的な害悪の発生がまったく予想されない以 上、そのような恐れは、現在「大阪行動」の表現活動に対してなされている妨害の理由には到底なりえないと考えます。
 また、Aに関しても、JR大阪駅前の広場および歩道がJR西日本という私企業の私有地であり、「管理地」であっ ても、このように公道との区別が判然とせず、誰もが自由に通行できるきわめて公共性が高い空間は、典型的な「パブ リック・フォーラム」(歴史的に表現活動の場として利用されてきた場所)に該当すると考えられ、公道と同様に、通 行人等の交通の秩序を著しく阻害する等の特段の事情がないかぎり、表現行為の規制は原則的に許されません。なぜな らば、駅前の広場や歩道での表現活動が管理者の意思次第で規制されるのであれば、多くの一般市民は不特定多数の者 が集まる場所でのビラ配布等により見知らぬ他者に自己の見解を伝達する機会をおよそ失うことになるからです。
 自由民主主義社会における政治的決定は、自由な意見の交換の結果でなければなりません。私たちは、「大阪行動」 が通行人に意見を伝達することを妨害するJR西日本と大阪府警の行為は、自由民主主義社会としての日本社会のあり 方を深刻に傷つけるものであり、本妨害行為が継続されるならば「人権・自由・民主主義」といった「普遍的」(日本 国憲法前文)価値を共有する自由主義世界において日本国が嘲笑と侮蔑の対象となりかねないと考えます。私たちは、 JR西日本と大阪府警に対し、このような妨害活動を直ちに中止するよう、強く要請します。


2月1日 JRが妨害に。後ろに筆者

 この「声明」は、石川裕一郎(聖学院大学)、石埼学(龍谷大学)、岡田健一郎(高知大学)、笹沼弘志(静岡大学)、 中川律(宮崎大学)、成澤孝人(信州大学)の6人の大学教員が呼びかけ人となり、計54名の憲法研究者が賛同者に 名を連ねています。これはとても大きなことです。特筆すべきはその中に沖縄から小林武(沖縄大学)、高良沙哉(沖 縄大学)、高良鉄美(琉球大学)の3名の教員が含まれていることです。また、高作正博(関西大学)、田島泰彦(上 智大学)、山内敏弘(一橋大学名誉教授)など著名な学者も賛同されています。

3.JR大阪駅は、「大阪行動」の『公開質問状』の受け取りを拒否する。

 同じ1月31日(金)、「大阪行動」はJR大阪駅長に対し『公開質問状』を発しました。それには「本状提出後2 週間以内に話し合いの場を設け、その席上、『回答書』をいただきたく申し入れます」と記してあります。質問項目は 以下の通りです。
1.この度のJR大阪駅の対応は憲法21条「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」 に違背しているが、JR大阪駅の見解を示されたい。
2.道路交通法77条1項4号には「道路において祭礼行事をし、又はロケーションをする等一般交通に著しい影響を及 ぼすような通行の形態若しくは方法により道路を使用する行為又は道路に人が集まり一般交通に著しい影響を及ぼすよ うな行為で、公安委員会が、その土地の道路又は交通の状況により、道路における危険を防止し、その他交通の安全と 円滑を図るため必要と認めて定めたものをしようとする者」とあり、道路上のチラシ配布はこれに該当しない。JR大 阪駅の見解を示されたい。
3.JR大阪駅は公安警察を介入させ、平和を望む私たちを威圧し、暴力で排除させようとしているが、その法的根拠を 示されたい。
4.JR大阪駅は強制的に排除しないと発言しているにもかかわらず、JRが作成したボードには、「ここはJR西日本 の管理地です。管理地内のビラ配布・街宣行動は認めておりません。通行に支障がありますので、中止するか又は管理 地外へ退去して下さい」と書かれている。この内容は強制的に撤去を求めるものであり違法であるが、JR大阪駅の見 解を示されたい。
5.日本国有鉄道(国鉄)は管理地内におけるチラシ配布等について認可していた。鉄道営業法上の「鉄道地」では許可 が必要だろうが、私たち「大阪行動」の表現活動の場は「鉄道地」ではないので、許可は必要ない。にもかかわらず「 許可申請を出しても許可しない。そもそも許可申請書もない」(JR大阪駅長談)となったのはなぜか、JR大阪駅の 見解を示されたい。


1月31日 JR大阪駅は『公開質問状』の受け取りを拒否する

 この『公開質問状』をJR大阪駅長に手交するため私たちは駅事務室に行きましたが、JRは受け取りを拒否しまし た。何ということでしょう。そこで配達証明付き郵便で送付したところ、これまた受け取りを拒否し『公開質問状』を 配達証明付き郵便で送り返してきたのです。驚くべきJRの対応です。


2月8日 新しい横断幕

 こうした事態が今日まで続いています。この事態を重く受けとめ、2月1日(土)に二人の憲法学者が大阪駅前に調 査にみえ、2月8日(土)には『沖縄タイムス』と『朝日新聞』が取材に来ました。
 以上の経過を多くの読者のみなさまに認識いただき、ご理解と連帯を心から呼びかけます。


2月8日 工夫を凝らしてパネルを掲げる

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